2013年4月17日水曜日

「南京町」事件から見る「商標権の侵害」と「先使用による商標の使用をする権利」について

神戸市の食料品製造会社「神戸瑞穂本舗」が、「南京町」の商標権を保有する南京町商店街振興組合を相手取り、約1億1千万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こしたそうです。

損害賠償請求の理由は、南京町商店街振興組合(以下、「振興組合」と略させて頂きます)が神戸瑞穂本舗の取引先に対して「神戸瑞穂本舗は商標権を侵害している」という内容の文書を送ったため、神戸瑞穂本舗の売り上げが激減したということです。

なお、新聞記事によると、「南京町」の商標権をめぐっては、昨年4月に、振興組合が「無断で商標を使用された」として、神戸瑞穂本舗に対して1650万円の損害賠償を求め大阪地裁に提訴しているそうです。


まず、振興組合が保有する商標権に係る登録商標は、登録第5193188号であり、以下のような文字からなります。
(指定商品:茶,氷,菓子及びパン,調味料,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,肉まんじゅう,ハンバーガー,べんとう,即席菓子のもと )


一方、神戸瑞穂本舗が使用している商標は、同社のホームページによると、下記のようなものであり、「神戸中華街 南京町冷麺」の文字がみられます。





この訴訟では、以下の点が争点になると考えます(あくまで推測ですが)。

(争点1)
神戸瑞穂本舗が使用している商標は、振興組合が保有する登録商標に類似しているのか?

振興組合の立場からすれば、『神戸瑞穂本舗が使用する商標「神戸中華街 南京町冷麺」のうち、「神戸中華街」は単なる産地や販売地などの地名にすぎず、また、「冷麺」は商品名を指しているに過ぎないから、商標「神戸中華街 南京町冷麺」の要部(商標で一番のポイントなる識別表示機能を発揮するところ)は「南京町」であり、この部分「南京町」は登録商標の「南京町」と一致している。したがって、神戸瑞穂本舗が使用する商標「神戸中華街 南京町冷麺」は、振興組合が保有する登録商標「南京町」に類似する。』と主張することでしょう。

一方、神戸瑞穂本舗は、『そもそも振興組合の登録商標「南京町」が登録となったのは、「南京町」が地名であることに鑑みれば、当該登録商標が特定の書体で記載されていたからである。してみると、振興組合の登録商標「南京町」と、使用商標「神戸中華街 南京町冷麺」とは書体が違うので、両商標は非類似である。また、使用商標「神戸中華街 南京町冷麺」は全体で一つの商標であり、全体が要部となるものであるから、使用商標「神戸中華街 南京町冷麺」と登録商標「南京町」とは非類似である。』と主張することでしょう。

(争点2)
振興組合が保有する登録商標「南京町」は、2008年に出願され、同年に登録になっています。
一方、神戸瑞穂本舗によると、同社は商標「神戸中華街 南京町冷麺」を1994年から使用していたそうです。
神戸瑞穂本舗の主張が正しければ、同社は登録商標「南京町」の出願に先立つこと10年以上も前より、商標「神戸中華街 南京町冷麺」を使用していたということになります。
したがって、神戸瑞穂本舗は、「先使用による商標の使用をする権利」を有していると主張することでしょう。

(争点3)
神戸新聞の記事によれば、振興組合は神戸瑞穂本舗の取引先に対して「神戸瑞穂本舗は商標権を侵害している」という内容の文書を送っています。この振興組合の取引先に文書を送るという行為が、不正競争防止法の信用毀損行為に該当するか否かが争われることでしょう。
また、売り上げが落ちたことと文書を取引先に送付したこととの因果関係や、損害額についても争われることでしょう。


争点としては、上述の1~3であると推測しますが、この事例は「商標の本質は何か」ということを教えてくれます。

まず、商標法上の保護対象は、外形的には「商標」です。つまり、マークや言葉等です。
しかし、真に商標法が保護の対象としているのは、その商標に付いている(化体している)「業務上の信用」です。

したがって、登録商標であっても、それが実際に使用されていなければ、保護対象となる信用が登録商標には化体していないということになり、商標権に基づいて第三者に対して権利を行使することはできません。

逆に、商標(「南京町」)の出願前から同一或いは類似する商標(例えば、「神戸中華街 南京町冷麺」)を使用していた場合でも、その出願前から使用していた商標が需要者の間に広く認識されており、その商標に信用が化体(付いて)していなければ、「先使用による商標の使用をする権利」は認められません。

繰り返しますが
商標法の保護対象は、商標そのものでは無く、商標に化体している(付いている)「業務上信用である」ということ、
先使用による商標の使用をする権利が認められるためには、単に出願前から商標を使用していることだけでは足りず、出願前よりその商標に業務上の信用が化体している(付いている)ことが必要であること
は理解しておくべきでしょう。

以上
(弁理士 森本聡)

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