2013年4月15日月曜日

写真の著作物を譲渡する際に注意すべき事項(「著作物」の譲渡と「著作権」の譲渡の違い)

カメラマンの方が、ご自身で撮られた「写真」を第三者に譲渡することは良くあることです。しかしながら、この「写真を譲渡した」ことに伴うトラブルも多々生じています。

例えばこんな事例です。

ある美術館でカメラマンが個展を開いたときに、美術館側から「展示した作品を有償で譲って頂けませんか?」とカメラマンに申し入れがあった。

カメラマンが「有難いお話です。」と申し入れを快諾したところ、美術館側から「作品のデータ(jpegデータ)も頂けませんか」とさらなる申し入れがあり、カメラマンは作品の対価を受け取るとともに、作品のデータを美術館に渡した。

作品やデータの譲渡の際に、売買契約書の類は交わさなかった。

しばらく経って、カメラマンが、その美術館のウェブページを見てみると、作品である写真がウェブページに掲載されており、誰でも見ることができるようになっていた。

カメラマンは「確かに作品は譲り、そのデータも渡したが、ウェブページに掲載することまでは許可していない。」と主張します。

一方の美術館は「正当な売買契約の元で手に入れた作品をウェブページに掲載して何が悪い。」と主張します。

法律的にどちらの主張が正しいのでしょうか?

まず、上記のような事例で、両者の意見が食い違う原因は、カメラマンから美術館に譲渡されたものが、①「作品そのものだけなのか」、②「作品そのものだけでなく、著作権をも含むのか」ということです。
換言すれば、売買の対象となったのは、「作品」か「作品+その著作権」かということです。

売買契約書や譲渡契約書が存在し、その中に「売買対象が作品+著作権である旨」が記載されている場合には、美術館側が絶対的に有利です。

それでは、売買契約書が無い場合には、カメラマン側が有利であると一概に言えるのでしょうか?

カメラマンは一応有利
原作品を譲渡することと、著作権を譲渡することとは全く次元が違います。
著作権法には「作品を譲渡すると、その著作権まで譲渡したものとみなす(推定する)」というような規定もありません。
したがって、上記の事例では、カメラマンは著作権まで譲渡したとは言えず、作品の著作権は依然としてカメラマンが保有していると考えて良いでしょう。

カメラマンが不利となる場合もある。
しかしながら、以下のような理由がある場合には、著作権も美術館側に譲渡したと判断される可能性があります。

・譲渡金額(売買金額)があまりに高額である場合。
「この金額って作品の譲渡金額にしては高すぎるよね。当然に著作権の譲渡も含んでいるんじゃないの」と思われるような金銭をカメラマンが受け取っていた場合には、著作権も譲渡したものと判断される可能性があります。

・データがどのように利用されるのか、想像がつかなかったのか?
インターネットが発達した現在では、作品のデータを渡すと、それがウェブページに掲載されることは容易に想像がつきます。したがって、美術館側から「著作権は譲渡されていないにしても、ウェブページに掲載されることは当然に予想され、データを譲渡した時点でウェブページ掲載については暗黙の許諾があったんじゃないの(公衆送信権については許諾したでしょ)」と主張され、この主張が認められる可能性はあります。



結局、契約の問題

以上のようなトラブルが後々に生じることを防ぐためにも、譲渡に先立って、譲渡対象は何かということを契約で決めておくことが必要です。
特に、著作権は無体財産権であるため、著作者(カメラマン)から第三者に譲渡されたのかの判断はできません。この点に鑑みても、譲渡対象をきちんと契約で決めておくことは肝要です。
また、データを渡すような場合には、データの利用方法や利用期間などについても、契約で決めておくことが肝要です。

譲渡契約のポイントをまとめると以下のとおりとなります。
①譲渡の対象を明確にする。
(譲渡対象が、作品なのか、著作権なのか、著作権の一部(例えばインターネットに公開する権利(公衆送信権に限るなど))を明確にしておく必要があります。)

②独占的か否かを明確にする。
譲渡人である著作者(カメラマン)の著作物の利用を許すのか(非独占的)、それとも譲受人のみが著作物を利用できるのか(独占的)を決めておく必要があります。

③二次的著作物に関する権利の取扱いを明確にする。
著作権を譲渡する契約を結ぶ場合には、二次的著作物に関する権利(二次的著作物を創作する権利および二次的著作物を利用する権利)が譲渡の目的として特に明記されていないときは、譲渡の対象でないと推定されます。そのため、二次的著作物に関する権利も譲渡の対象とする場合には、その旨を契約書に明記しておく必要があります。

④著作者人格権の行使を放棄するか否かも明確にする。
著作物を譲り受けても、著作者人格権については譲り受けることはできないため、著作権を譲り受ける場合には、著作者(カメラマン)は著作者人格権を行使しない旨を契約書に明記しておく方が譲受人には有利となります。

以上

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