2013年4月9日火曜日

日本の企業は、中国の実用新案をもっと活用すべき

 我国における実用新案登録の出願件数は、特許出願件数に比べて極端に少ないというのが実情です(特許35万件に対して、実用新案1万件程度)。

 加えて、我国において実用新案権に基づく権利行使が認められるのは極めて稀であるため、実用新案権は「権利行使できないもの」「権利を取っても使えないもの」というイメージが強く、衰退する一方です。

 これに対して、中国の実用新案制度では、むしろ実用新案登録出願の方が特許出願よりも多くなっています(2011年度の統計では特許出願件数が52.6万件であるのに対して、実用新案登録の出願件数は58.5万件)。


(特許庁の中国統計情報より)


この違いはどこからくるのでしょうか。

(理由1)早期に権利を得ることができる。
 
 中国の実用新案制度は、日本と同様に実体審査を行わない無審査登録主義が採用されており、方式的な審査を経れば実用新案権を得ることができます。

 したがって、実体審査が行なわれる特許に比べると、実用新案出願の方が格段に早期に権利を得ることができます。
 
 2010年の統計によると、実用新案は出願から設定登録までの期間が平均7カ月であるのに対して、特許は審査請求から登録までの期間が平均2年でした。このことからも、実用新案がいかに早期に権利化を得ることができるかが分かります。

(理由2)安価である
  
 実用新案の方が、特許に比べて出願時や設定登録時や維持のためのオフィシャルフィー (中国専利局(特許庁)に収めるお金)が安価に設定されています。
 
 また、特許と異なり、実体審査の費用や実体審査に伴う中間処理の費用なども発生しません。
 
 従って、コストの観点からみても、実用新案の方が特許よりも優れているといえます。

(理由3)権利が潰され難い(権利が安定している)。
 
 日本では、特許と実用新案の進歩性の違いが必ずしも明確ではありませんが、中国では明確な異なるものとなっています。
 
 具体的には、実用新案における進歩性を判断する際の先行技術の文献数は、原則として2つ以下となっています(特許では、3以上の文献を組み合わせてもよい)。
 
 また、先行技術の分野も、実用新案は、原則として該当分野の文献しか考慮できないとなっています(特許では、関連する周辺分野の文献に基づいて判断されることもある)。
 
 したがって、実用新案の方が特許より進歩性のレベルが低いもので足りることが明確となっており、特許に比べて権利が無効にされ難い(潰され難い)という点で、中国の実用新案権は日本の実用新案権に比べて格段に権利の安定性が担保されていると言えます。

(理由4)権利を行使するときの権利者の負担が小さい。
 
 我国の実用新案制度では、訴訟を提起する前に、技術評価書を添付した警告を相手先に送ることが必要です。
 
 これに対して、中国の実用新案制度では、訴訟を提起するときに技術評価書を提出すればよく、我国のような技術評価書を添付した警告は、訴訟提起の条件とはなっておりません。
 
 さらに、我国において実用新案権に基づいて権利行使するときには、実用新案権者は侵害者の過失を立証する必要がありますが、中国の実用新案制度では実用新案権者は侵害者の過失を立証する必要はありません。
 
 このように、中国の実用新案制度は、日本の実用新案制度と比べて権利行使の際の実用新案権者の負担が軽く、権利行使がしやすくなっています。

(理由5)特許と実用新案を同時に出願することも可能

 我国では、特許と実用新案を同時に出願して両方の権利を取ることはできません。

 これに対して、中国では、特許と実用新案を同時に出願して両方の権利を取ることができます。これにより、例えば、最初の数年間は実用新案で権利を保護し、その後は特許でカバーするといったことが可能です。

 
 以上のように、中国の実用新案権は、早期且つ安価に、しかも実体審査を経ずに権利を得ることができるにも拘らず、簡単には潰され難く、さらに権利行使も容易であるという特徴を備えています。
 
 これにも拘らず、外国からの実用新案登録出願は、全体出願件数の1%程度にすぎません。
 
 これは、日本人を含む外国人の「実用新案権は、権利行使が難しいから、権利を取得しても使えない。」という偏見からくるものだと思います。
 
 しかしながら、実際には、小型の電源ブレーカーを製造しているフランスのシュナイダー社が、中国の正泰集団から実用新案権の侵害で訴えられ、50億円の損害賠償を命じられ、最終的に20億円程度で和解した事案(シュナイダー事件)もあります。


 日本企業も、中国での実用新案権は日本の実用新案権とは違うということをよく理解して、中国での実用新案権の取得も視野に入れるべきだと思います。

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