2013年4月15日月曜日

RAWデータの著作物性について

最近、知り合いのカメラマン(株式会社2055の村田ヒロシ専務)から、「RAWデータに著作性は無いのか?」というご質問を頂きました。

ここで、「RAWデータ」や「RAW画像」とは、デジタルカメラにおける「未現像」データを意味します。多くの一眼デジタルカメラやミラーレスのデジタルカメラでは、JPEG方式だけでなく、このようなRAW方式での画像の保存が可能となっています。

RAW方式で保存された画像データ(RAWデータ)には、カメラによる自動レタッチ処理がなされておらず、「未現像」な状態であるため、「RAWデータには写真の著作物としての著作物性が無いのではないか」或いは「RAWデータは写真の著作物ではないのではないか」というような議論がなされているようです(一方、JPEGデータでは、保存時にカメラによる自動レタッチ処理がなされ、現像された状態で保存されるため、「JPEGデータは写真の著作物である」という点に議論を挟む余地は無いようです。)。

特に、プロのカメラマンは、その後のレタッチ処理を考えて、RAW方式で画像を保存することが一般的となっているため、RAWデータが著作物となるか否かは、ビジネスに大きな影響を与えます。

具体的には、仮にRAWデータには著作物性は無いということになると、クライアントから「RAWデータを下さい」と言われて、うっかりカメラマンがRAWデータを渡した場合には、「これは貴方の著作物ではないから、自由に使いますね。」とクライアントから言われるおそれがあります。さらに惨いことに「貴方はこのRAWデータの著作権者ではないから、撮影料は支払いません。」などとも言われるおそれもあります。

巷では「RAWデータは著作物では無い」とする意見が多いようです。

まず、過去の裁判例を調べましたが、私が調べた範囲では「RAWデータが著作物か否か」について直接的或いは間接的に争われた裁判例はありませんでした。

次に、「RAWデータには写真の著作物としての著作物性が無い」という意見の根拠は、以下の二つの意見に集約されると考えます。

RAWデータは現像することで初めて写真の著作物として成立する。つまり、RAWデータは、現像時に写真の著作物の根幹を成す「表現」が確定するため、これが確定していないRAWデータには著作権が無い。
RAWデータ自身は、「写真の著作物」を作成する道具にすぎないから、これは美術の著作物の原作品にも該当しない。(版画における「版木」は、著作物では無いという考えです。)

どちらも大変説得力のある意見で、反論することが困難ですが、私なりに頑張ってみました。

(第1の反論)
RAWデータに「RAWデータ」としての著作物性が皆無であると断言できるのか?
換言すれば、「版木」には著作物性は皆無であると断言できるのか?ということです。
RAWデータを作成するためには、カメラを操作するカメラマンは、最終物である「写真」の形態となったときに表現される色や影をコントロールすることを目的として、ライティングなどの種々の技法に工夫を凝らす。したがって、RAWデータには、カメラマンの創意工夫が種々含まれており、RAWデータはカメラマンの表現の結晶であるから、それ自身で一つの「美術の著作物」として成立し得るのではないか。

(第2の反論)
保存形式の違いでしかないのではないか。
RAWデータの著作物性を否定する上記意見は、結局、カメラを使った撮影時の保存形式に拘泥する(こだわる)意見にすぎない。
つまり、上記意見に従えば、JPEG形式等で保存すると写真の著作物となり、RAW形式で保存すると写真の著作物が否定されるということになる。しかしながら、RAW形式で保存されたデータであっても、なんら表現に改変を行うことなく、JPEG形式のデータと同様に、撮影時の表現をそのまま踏襲してプリントアウトしたり、保存したりすることが可能である。したがって、RAW形式のデータであっても、JPEG形式のデータと同様に、写真の著作物と認定されるべきである。
元より、JPEG形式やGif形式のデータであっても、RAW形式のデータと同様に、色等に表現に改変を加えることは技術的に可能である(そのようなソフトは多数存在する)。したがって、RAW形式のデータでは「表現」が確定していないのに対して、JPEG形式のデータでは「表現」が確定しているという事実は全く無く、また、RAWデータ自身は「写真の著作物」を作成する道具にすぎないのに対して、JPEG形式のデータは「写真の著作物そのもの」という事実も無い。以上より、「RAW形式のデータは写真の著作物でない」として、RAWデータの著作物性を否定した上記意見は失当である。

(第3の反論)
RAWデータとネガフィルムとの違い
ネガフィルムを写真とするためには、微妙に調整された現像液、停止液、定着液を使うことが必要であり、これら現像液等の調整具合によって、最終的に現像される写真の表現には多いに差異が生じることが避けられない。
これに対して、上記のようにRAWデータの場合には、撮影時の表現方法に手を加えることなく、撮影時の状態そのままで、これを現像して写真化(プリントアウト)等することが極めて容易で可能である。
以上のような「現像」の違いに鑑みれば、ネガフィルムとRAWデータとを同視することは不適であり、ネガフィルムと同様に、RAWデータを「写真を作成するために道具にすぎない」と認定すること自体が不適である。

(第4の反論)
著作権には、複製権だけでなく、翻案権もあるじゃないか
上記のように、RAWデータであっても、何ら表現方法に手を加えることなく(改変することなく)、撮影時の状態そのままで、これを現像して写真化(プリントアウト)等することは可能であるから、少なくとも、RAWデータに保存されている改変前のデータは「写真の著作物」と認定されるべきである。
してみると、改変を加える前のRAWデータ(撮影時の状態そのままを表現できるデータ)を複製する行為は、「写真の著作物」の複製権の侵害にあたる。また、RAWデータ(撮影時の状態そのままを表現できるデータ)に改変を加える行為は、翻案権の侵害に当たる。
この主張は、改変を加える前のRAWデータ(撮影時の状態そのままを表現できるデータ)が「写真の著作物」であることを前提とする意見ではありますが・・・・。


以上のように、カメラマンの立場に立って、RAWデータの著作物性を肯定する主張を述べてみました。

カメラマンやデザイナーといった写真の著作物にたずさわる方々の参考になれば幸いです。尤も、上記の意見は、私見でありますので、その辺はご了解下さい。

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