2013年5月10日金曜日

商標法8条5項の「くじ」の具体的方法(特許庁で真剣に「くじ」が行われているという話)


特許庁に対する特許出願や商標出願は「早い者勝ち」です。


つまり、特許庁に最初に出願した者は、後から出願した者に対して優位な立場に立つことができます(後の出願が権利化されることを、先の出願で阻止できるなどです)。


それでは、同じ日に、異なる者が、同じような発明や商標を特許庁に出願した場合には、どうなるのでしょうか?


例えば、甲さんと乙さんとが、同じ発明Aについて、同じ日に特許庁に特許出願を行ったとします。


このような場合には、特許庁長官は、まず、甲さんと乙さんに対して協議命令を発して、「どちらか一方の出願を選ぶように」といいます。


そして、甲さんと乙さんとが協議を行い、協議が成立して一人の出願人が選ばれたときには、その者に対してのみ特許権を付与します(勿論、新規性や進歩性などの特許要件を満たしている必要はありますが・・・)。


ここまでは、特許も商標も同じです。

つまり、同じ日に、甲さんと乙さんとが、同じ商標Bについて、同じ日に特許庁に商標出願をしたときには、特許庁長官は協議命令を発し、甲-乙間の協議が成立したときには、協議により選ばれた者の商標に対してのみ商標権を付与します。


協議が成立しなかったときの対応は、特許と商標とでは異なります。


特許で協議が不成立であったときには、甲さんも乙さんも発明Aについて特許を受けることができません。つまり、どちらの出願も拒絶されます。意匠も同じです。


一方、商標では、協議が不成立であったときには、最終的に「特許庁長官が行なう公平な方法によるくじ」で出願人を選ぶとなっています(商標法8条5項)。

「くじ引き」です。
嘘のような本当の話です。

具体的なくじの方法は、「じゃんけん」「さいころ」「ガラポン」の三段階となっているそうです。

まず、“じゃんけん“でサイコロを振る順番を決め、次に“じゃんけん“で決められたサイコロを振る順に従って2つのサイコロを振ります。

次に、2つのサイコロを振って出た目の合計が多い方から順に、ガラポンに入れる玉の色を決定します。

最後に、玉が入れられたガラポンを廻し、ガラポンから出た色の玉を選んでいた人が「当選者」となります。


「ガラポン」とは、商店街のくじ引きで使われるやつと同じです。



で、大事なポイントは、何故、商標だけ、同日に二以上の出願が競合した場合に「くじ」が行われるようになっているのか?ということです。


特許法の保護対象である「発明」は、端的に言うと技術であり、技術開発により新しく作り出されたものです。したがって、協議不成立の場合に「くじ」で一人の出願人を決めるとなると、「くじ」で外れた人は、その技術を使った製品を作ることができなくなり、その方の不利益は極めた多大です。


一方、特許庁は、商標法の保護対象である「商標」は作り出されたものであるとは考えておらず、基本的には、世にある言葉や図形から選ばれた選択物であると考えています。そして、『「くじ」に外れた人は、別の商標を選択すれば良いじゃないか。』という考えから、「くじ引き」という制度を採用しています。

以上
(弁理士 森本聡)

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