2013年5月31日金曜日

発明を公にした後に特許出願する場合の手続きについて

完成した発明について特許権を得るためには、発明が所定の特許要件を満たしている必要があります。


この特許要件については特許法に明確に規定されており、代表的なものとしては、


■ 発明が新しいこと(新規性)、
■ 発明に飛躍性があること(進歩性)

などを挙げることができます。


つまり、完成した発明について特許を受けるためには、最低でもその発明が従来には無い新しいものであり(新規性があり)、且つ飛躍性があること(進歩性があること)が必要です。


したがって、原則としては、発明を公に発表してしまうと、その発表時点で発明は新規性を失い、その後に特許出願しても、その発明について特許を受けることはできません。



新規性の判断方法


新規性を失ったか否かは、「秘密保持義務の有無」を基準に判断されます。


つまり、秘密保持義務の無い人(一人でも)に発明の内容を伝えると、その時点で、その発明は公となり、新規性を失います。
逆に言うと、百人に発明の内容を伝えても、その百人全員に秘密保持義務が課されている場合には、その発明は公になりません。


新規性喪失について


上記のように、特許出願前に発明の内容が公となると、新規性が失われたということになるため、特許権を得ることはできません。


しかし、この要件を厳密に解釈していくと、却って産業の発達を阻害するおそれがあります。


例えば、特許出願前に学会で発表しなければならない場合、展示会に出品しなければならない場合などです。


学会で発明と同じ内容を発表したり、展示会に発明を使った製品を出品したりした後では、絶対に特許権が得られないということになると、発明者の意欲が削がれてしまいます。


このため、特許法では「新規性喪失の例外」という規定が設けられています。


この「新規性喪失の例外」とは、要は「特許出願前に発明を公にしたことを正直に自白したら、許してあげますよ(新規性を失ったとは判断しませんよ)。」という救済制度です。


新規性喪失の例外の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

■ 発明を公にしてから、6ヶ月以内に特許出願すること。

■ 特許出願時に、新規性喪失の例外の適用を受けたい旨を願書に記載すること。



以前は、新規性喪失の例外の適用を受けるためには、特定の学会で発表した場合や、特定の展示会に出品した場合や、新聞や雑誌などに公表した場合などに限られていました。


しかし、現行の特許法では、「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して、発明が公になった場合」には新規性喪失の例外の適用を受けることができるようになっています。


つまり、発明を使った製品を販売した場合でも、販売から6ヶ月以内であれば、新規性喪失の例外の適用を受けて特許出願することができるようになっています。




で、今回、気になった記事は、愛知の大学生が中学二年生であった2008年に完成した「テレビ消音装置付き電話機」で特許を取ったというものです。

毎日新聞の記事はココです。


この記事の中に「この装置は08年11月の「あいち少年少女創意くふう展」でグランプリの文部科学大臣奨励賞に輝き、その直後にクラブ指導員の推薦で特許を出願した。」という一文があります。


この記事の一文に従えば、発明の内容は「あいち少年少女創意くふう展」に応募され、審査を受けてグランプリの文部科学大臣奨励賞を取り、その後に特許出願されたということになります。


してみると、特許出願前に行われた賞の発表や、「くふう展」への応募時には、既に発明の内容が「公知」となっていたおそれがあります。


特許電子図書館のデータベースを使って「発明者」で検索すると、この大学生の名前では2件の特許出願(出願公開公報)がヒットします。しかし、いずれの特許出願でも「新規性喪失の例外」の適用を受けていません。


「新規性」や「新規性喪失の例外」の観点から見ると、「創意くふう展」の応募用紙等には発明の具体的内容は記載されていなかったのか、賞を審査した方々に秘密保持義務が課せられていたのか、文部科学大臣奨励賞の発表時に、発明の具体的な内容は全く発表されていなかったのか、などといった点が心配になってしまいます(天邪鬼でスイマセン)。



以上です。
(弁理士 森本聡)


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したがいまして、法律的には正確とは言えない表現を用いている場合もあります。

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