2013年5月8日水曜日

笑えない「笑笑」のブランド戦略


2013年4月30日付けのITmedia ニュースによると、任天堂「Wii U」の「わらわら広場」の商標が誤認、混同を招くとして、居酒屋チェーン「笑笑」を運営するモンテローザが商標登録の取り消しを求め、特許庁に異議を申し立てたそうです。


私は、商標「笑笑」と聞いて「またかぁ」と思いました。


上記の任天堂の「わらわら広場」に対する事案は特許庁に対する異議申立ですが、平成10年に「笑笑」が商標登録されてから、モンテローザは「笑笑」に関する国内外のトラブルへの対処に追われてきました。


まず、2009年に、モンテローザは大阪西成区、それも萩之茶屋にある立ち飲み居酒屋「笑笑」を商標権侵害で告訴しました(47NEWSより)。


西成にあった立ち飲み居酒屋「笑笑」


ご存知無い方に解説しますと、大阪の「西成区」と言えば、日雇い労働者の街として有名な街です。その中でも「萩之茶屋」といえば、「白い薬」や「さいころ賭博」で悪名高き「萩之茶屋南公園」(通称:三角公園)があるところで、大阪人であっても容易に近づくことは憚れます。

心斎橋のアメリカ村にある「三角公園」に行くつもりが、西成の「三角公園」に来てしまい、ショックを受けて帰られる観光客が極稀におられます(周りに古着屋が多いという共通点はありますが・・・)。

三角公園に普通の人が入っていくと、逆に怪しまれて警官に見つかると職質されます(炊き出しのボランティアの方々は、立派にボランティアに励んでおられます。頭が下がります)。

南海本線には「萩之茶屋駅」がありますが、不可解なことに駅近くでは線路に沿って「目隠し用」もしかすると「線路へのゴミの投げ込み防止用」のフェンスが立てられています。

過去に何度か暴動が起こったため、西成警察署の入口は要塞のようになっています。

私は高校時代の友人が萩之茶屋に住んでいたため何とも思いませんが、百聞は一見にしかずと言っても、普通の観光客が西成の三角公園を一見することは、全くお奨めできません。カメラを出して歩くことも止めたほうが良いでしょう。


で、そんな萩之茶屋のど真ん中にある立ち飲み居酒屋が、著名な居酒屋チェーンの「笑笑」と同じ名前を付けたということで、モンテローザは商標権侵害で萩之茶屋の立ち飲み居酒屋「笑笑」の店主を告訴しました。上記ニュースを見ても立ち飲み居酒屋の店主が商標法違反で書類送検となったことと、立ち飲み居酒屋が別の名前(喜楽)に変更されたこと程度しか判りませんが、いずれにしても、モンテローザの目的は無事に達せられました。


次に、2012年に、モンテローザは、韓国の特許審判院に対して、韓国で居酒屋チェーン「WARAWARA」を展開している現地企業(F&Dパートナーズ)の商標登録の無効審判を請求しました。韓国の裁判所は、韓国の特許審判院と同様、モンテローザ側勝訴の判決を下しました(2012年2月8日付のIP NEWSより)。


裁判所は、「韓国内でも日本語が普及しており、多くの消費者がどちらも「わらわら」と読んで、誤認・混同する恐れがある」として、商標登録無効と判断。F&Dパートナーズの控訴を棄却したそうです。
この韓国の事例においても、モンテローザの請求は認められました。


そして、上記の任天堂「Wii U」の「わらわら広場」の商標に対する異議申立です。


「異議申立制度」とは、特許庁が商標を登録したことに対して「チョット待って」と異議を申し立てる制度です。つまり、特許庁に対して「審査に誤りがあるんじゃないんですか。」とケチを付ける制度です。異議申立は登録公報が発行されてから二ヶ月以内に行う必要があります。


異議申立の具体的内容は不明ですが、異議理由に『任天堂「Wii U」の「わらわら広場」は、モンテローザの「笑笑」と混同を生じるおそれがあること(商標法4条1項15号)』が含まれていることは容易に推定できます。


より具体的には、モンテローザの主張は、「モンテローザの登録商標「笑笑」の指定商品・指定役務(サービス)と、任天堂の登録商標「わらわら広場」の指定商品・指定役務とを比較すると、両商標の指定商品・指定役務は同一でも無く、また類似するものでも無いが、登録商標「笑笑」は需要者の間で周知・著名となっており、「笑笑」と言えば、居酒屋の「笑笑」を示すものとなっているため、商品や役務とは無関係に他人の登録を排除する効力を持っているから、「笑笑」と同じ称呼(呼び名:ワラワラ)を有する「わらわら広場」は登録されるべきでは無い。」という主張であると推定します。


つまり、登録商標の効力は、原則として指定商品或いは指定役務に類似する商品・役務にまでしか及びません。
しかしながら、商標法には、登録商標が周知の程度を超えて著名にまで至った場合には、類似商品・類似役務の範囲を超えて、他人の登録を排除することができるという規定が設けられています。


例えば、ブランドの「グッチ」は著名ですが、グッチ社は商標登録としては、「装飾品」や「かばん」などでついてのみ商標権を所有しています。


このような場合に、装飾品等に類似する商品についてのみ、他人の後願の商標登録を排除することができないということになると、例えば、グッチ社以外の第三者による、指定商品を「文房具」とする商標「グッチ」の商標登録が認められたり、指定商品を「車」とする商標「グッチ」の商標登録が認められるということになります。
そうすると、一般の需要者は、「文房具がブランド「グッチ」と何か関係があるのでは、・・・。」或いは「グッチが車を作ったんや。」と勘違いする可能性があります。
つまり、一般需要者が出所を混同するおそれがあります。


このため、商標法では、著名商標については、当該著名商標と非類似の商品や役務についても商標登録を認めないという規定(商標法4条1項15号)を設けています。


著名商標については、特許電子図書館に「日本国周知・著名商標」というデータベースがあり、そこには現在、計1115件の商標が登録されています。

モンテローザの「笑笑」も上記データベースに乗っています。


今から商品やサービスのネーミングを考えられる場合には、その商品やサービスの分野(分類)に関してそのネーミングが既登録商標と類似しているか否かという観点だけでなく、そのネーミングと似たような商標が周知・著名商標であるか否かということにも注意を払うことが必要です。


最後に、任天堂に対する異議申立がどのような結論になるかは不明ですが(私見としては、モンテローザの請求が認められる可能性は低いように思いますが)、相手の規模の大小とは関係なく、モンテローザのブランド「笑笑」をしっかり護るというブランド戦略は間違っておらず、高く評価されるべきものだと思います。

以上
(弁理士 森本聡)

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